健康診断や人間ドッックの結果をもらったら

健診や人間ドックを受けたものの、受けたことで安心してしまって、そのままにしていませんか? 「再検査と書いてあるけど、忙しくて」とおっしゃる方も少なくないですが、健診や人間ドックは、判定の指示に従ってアクションを起こしてこそ初めて受けた意味があるのです.また「判定に書いてあることがよく理解できない」という言葉もよく聞かれますね。それでは、主な項目について解説させていただきましょう.

・「肥満」、「腹囲がある」
 肥満の判定はBMI(body mass index:体重[kg]÷身長[m]÷身長[m])で行うのが普通で、25.0以上が「肥満」です。同じ肥満でも、おなかの中(腹腔内)に脂肪がたまる「内蔵脂肪型肥満」で生活習慣病の発生頻度が増えることがわかっていて、腹部CT検査で内蔵脂肪面積が100cm2以上を「内蔵脂肪型肥満」と判定するのですが、全員に腹部CT検査を行うわけにもいかないので、それに見合う腹囲として男性85cm以上、女性90cm以上という値が設定されました。ちなみに、「内蔵脂肪型肥満」で増える生活習慣病としては糖尿病、脂質異常症、高血圧、高尿酸血症・痛風、脂肪肝、心筋梗塞、狭心症、脳梗塞、脳血栓症、一過性脳虚血発作などがあげられます。これだけ影響が大きいとなると、内蔵脂肪は放っとけませんね。

・「血圧が高い」
 血圧が上がって来て収縮期血圧(上の血圧)が130または拡張期血圧(下の血圧)が85になったらそろそろ要注意という意味で「正常高値血圧」、収縮期血圧が140または拡張期血圧が90になったら「高血圧」に分類されます。診察室で測る血圧は普段より少し高めに出るだろうということを盛り込んでありますので、家庭で測る場合は収縮期血圧が125または拡張期血圧が80になったら注意が必要です。高血圧で脳や首の血管がダメージを受けると脳出血や脳梗塞になり、冠動脈がダメージを受けると狭心症や心筋梗塞になり、腎臓の血管がダメージを受けると慢性腎臓病になります。

・「中性脂肪が高い」
 空腹時の中性脂肪が150mg/dL以上で高中性脂肪血症と診断されます。中性脂肪が高いと動脈硬化が進みやすくなると考えられており、実際に狭心症や心筋梗塞の発症に関わることが明らかになっています。肥満、糖尿病、多量飲酒があると中性脂肪は高くなりがちです。

・「LDL-コレステロール値が高い」、「HDL-コレステロール値が低い」
 コレステロールというと悪者扱いされているきらいがありますが、コレステロール自体は全身の細胞の表面を構成したりホルモンの材料になったりと、体にとってはなくてはならない物質です.しかしLDL-コレステロール(悪玉コレステロール)が増えたりHDL-コレステロール(善玉コレステロール)が減ったりすると動脈硬化が進行しやすくなるので、大事に至る前に是正しておく必要があります.空腹時のLDL-コレステロールが140mg/dL以上で高LDL-コレステロール血症、空腹時のHDL-コレステロールが40mg/dL未満で低HDL-コレステロール血症と診断されます。

日常生活の注意点
1)コレステロールを多く含むもの(卵、肉や魚の内蔵、魚卵)を摂りすぎない。盲点は卵が多く使われている洋菓子などの加工食品。しかし、「こういうものは食べ過ぎていないのに」と思われる方が多いかも知れませんね.
 2)肉の脂身、ラードなどに含まれる飽和脂肪酸はLDL-コレステロールを増やします.盲点は乳製品に含まれる飽和脂肪酸。牛乳、バター、チーズなどの摂り過ぎもLDL-コレステロールを増やします.
 3)魚の脂に含まれるDHAやEPAは、LDL-コレステロールを減らしてHDL-コレステロールを増やすだけでなく、血液をさらさらにして血栓ができるのを防ぎます.
 4)オリーブ油、なたね油(キャノラー油)に多く含まれるオレイン酸はLDL-コレステロールを減らしてHDL-コレステロールを増やします.
 5)大豆油、ごま油、ひまわり油、紅花油(サフラワー油)に比較的多く含まれるリノール酸はLDL-コレステロールを減らしますが、摂りすぎるとHDL-コレステロールも減らしてしまいます.ただ、ひまわり油や紅花油にはオレイン酸が多いタイプもあるようです.
 6)大豆製品にはリノール酸以外にも、レシチンというLDL-コレステロールを減らしてHDL-コレステロールを増やす成分が含まれています.大豆タンパクが消化されるときに生じる物質が、腸の中へのコレステロールの排出を促します.
 7)マーガリンやショートニングに含まれるトランス脂肪酸は強力にLDL-コレステロールを増やしてHDL-コレステロールを減らすので、なるべく摂らない、いや、絶対摂らないという意気込みが必要です.
 8)海草類、こんにゃく、果物、野菜に含まれている水溶性食物繊維は、腸内でコレステロールを吸着して排泄させます.
 9)タバコ、古い油(酸化した油)、大気汚染物質、塩素を除いていない水道水、紫外線、ストレス、過度の運動などで発生する活性酸素によってLDL-コレステロールが酸化されると、動脈硬化はさらに進行しやすくなります.炒め物や揚げ物にも酸化しにくい油(オレイン酸の多い油)を使いましょう.
10)ウォーキングなどの適度の運動はHDLコレステロールを増やします.

・「血糖値が高い、HbA1cが高い」
 血糖値とは血液の中のブドウ糖の濃度です。ヘモグロビンA1c(グリコヘモグロビンともいいます)とは、ざっくり言うとヘモグロビンの何パーセントに糖がくっついているかという値で、採血時から過去1、2ヶ月の平均血糖値を反映しています。最新の診断基準では空腹時血糖値 126mg/dl以上かつHbA1c 6.1%以上で糖尿病と診断されますが、健診では空腹時血糖値が110mg/dlになると要経過観察、140mg/dl以上で要受診、HbA1cのほうは5.5%になると要経過観察、6.5%以上で要受診となることが多いでしょう。血糖が高い状態が続くと動脈硬化が進みやすくなりますが、高血圧や脂質異常(高中性脂肪、高LDL-コレステロール、低HDL-コレステロール)や肥満を伴う場合はなおさらなので空腹時血糖 100mg/dl、HbA1c 5.2%あたりから注意が必要です。

・「AST(GOT), ALT(GPT)が高い」、「γGTPが高い」
 
AST(GOTともよばれます)やALT(GPTともよばれます)が高い場合は、ウイルス肝炎やアルコール性肝障害や脂肪肝などの原因で肝臓の細胞が壊れやすくなっていると考えられます。γGTP上昇の原因は多量飲酒であることが多いですが、胆嚢や胆管の病気が存在している可能性もあります。基準値の上限はASTとALTが30IU/L、γGTPは50IU/Lですが、「この基準値内の人の大部分は大丈夫」という意味にとらえてください。

・「クレアチニンが高い」
 腎臓は体の老廃物を尿として体外に排出している臓器ですが、この腎臓の全体的機能を評価する項目がクレアチニンです。しかしながら決して鋭敏とは言えず、正常の30%前後に落ちて来てやっと上昇し始めます。基準値は男性が1.0mg/dl以下で女性が0.7mg/dl以下です。これは筋肉量が多いと高めに出るためで、男性でも筋肉量が少なければ低めに、女性でも筋肉量が多ければ高めになります。

・「尿酸値が高い」
 尿酸とは細胞の中の核酸に含まれるプリン体の代謝産物で、濃度が7.0mg/dlになると溶解度を越えて尿酸塩として析出し始めます。この尿酸塩が痛風関節炎、腎障害、尿路結石の原因になるので、7.0mg/dlを正常上限に設定しています。