|
|
|
|
|
プラセンタ注射は数ある優れた注射液の中のひとつだと私は考えています。このコラムでは,できるだけ客観的・科学的・中立的な立場でプラセンタ注射を皆さまに御紹介してまいります。
|
|
|
|
|
第1回 私がプラセンタ注射をしぶしぶ認めるようになったいきさつ(2004.8.26) |
|
| 第2回 プラセンタ注射液には何が入っているのか(2004.9.10) |
|
|
| 第3回 プラセンタ注射でウイルスや細菌に感染することはないのか(2004.9.17) |
|
| 第4回 プラセンタ注射でプリオン病に感染することはないのか(2004.9.28) |
|
| 第5回 プラセンタ注射でプリオン病に感染することはないのか2(2004.10.7) |
|
| 第6回 メルスモンは更年期障害にどの程度効くのか(2004.10.22) |
|
|
| 第7回 ラエンネックは慢性肝疾患に実際に効くのか(2004.12.17) |
|
| 第8回 「美容注射で肝障害〜胎盤エキス」という新聞報道について (2005.1.17) |
|
|
|
第1回 私がプラセンタ注射をしぶしぶ認めるようになったいきさつ (2004.8.26)
私は数年前まで病院の勤務医でした。最後に勤めた病院は地域の中核病院でしたが,医者不足で昼夜構わず働きまくらなければならない状態でした。体力をつけなければと高カロリー高脂肪食を摂ることが多く,体重が増え,コレステロールが上がり,脂肪肝になりました。ある時カゼが治らないのでレントゲンを撮ってみると,肺炎。まだ初期だったので抗生物質の内服で治りましたが,しばらくすると今度は子供のころ以来出ていなかった喘息の発作が起こりました。医者の不養生。ミイラ取りがミイラになる。常勤医から非常勤医に降りて週2日だけの勤務とし,残りの日はクリニックでアルバイトをすることにしました。その時あるクリニックで出会ったのがプラセンタです。
うっかり引き受けてしまった(とその時思った)クリニックでプラセンタ注射を打っていると知った時,「そんなまやかし物を打っちゃいかん。効くわけないし危険なだけだ。」と,ほとんどの医者が初めに持つ感想を私も持ちました。ところが驚いたことに患者さんの反応があまりにいいのです。体調がよくなった,肌の状態が良くなったという人が続出です。最初は副腎皮質ステロイドが入っているに違いない,と思いました。ところが副腎皮質ステロイド特有の副作用も出ていません。いったい何ものなんだ? 体調を崩していたこともあり,自分も試してみようかという気に次第になって行きました。そしてある日ついに禁断のプラセンタ注射を打ってしまったのです。で,その効果は? てきめんでした。自分の視野の狭さを知り,プラセンタ注射というものを認めざるを得なくなった瞬間でした。
|
|
第2回 プラセンタ注射液には何が入っているのか(2004.9.10)
これから数回にわたって,プラセンタ注射液の添付文書(注射液の箱に添付されている説明書)の内容について御紹介してまいります。
医薬品としてのプラセンタ注射液にはメルスモン製薬(株)から出ている「メルスモン」(1956年10月販売開始)と(株)日本生物製剤から出ている「ラエンネック」(1974年7月販売開始)の2種類がありますが,含まれている成分は同一ではありません。いずれもヒトの胎盤を原料としていますが製造工程に違いがあるために,最終的な組成にも違いが出てきています。
メルスモンの有効成分で確認されているのは,
核酸関連成分(ウラシル,アデニン,グアニン,チミン,シトシン)アミノ酸(リジン,アラニン,アスパラギン酸,ロイシン,グルタミン酸,グリシン,バリン,セリン,チロシン,フェニルアラニン,スレオニン,アルギニン,プロリン,シスチン,イソロイシン,メチオニン,ヒスチジン)ミネラル(ナトリウム,カリウム,カルシウム,マグネシウム,リン,鉄)その他(キサンチン)
と記載されています。
ラエンネックの有効成分は
諸種のサイトカイン,アミノ酸,ペプチド,核酸塩基,糖質等の水溶性成分
と記載されています。
なお添加物として,メルスモンにはベンジルアルコールが,ラエンネックにはペプシン,乳糖,pH調整剤が含まれています。
|
|
第3回 プラセンタ注射でウイルスや細菌に感染することはないのか(2004.9.17)
感染症対策については添付文書で以下のように述べられています。
メルスモンの場合
HBV,HCV,HIVについて血清学的検査を実施して陰性であることが確認された健康人の胎盤を原料として,塩酸加水分解法により製造されている。ウイルス不活化を目的として製造工程において101℃以上,1時間以上の塩酸加熱処理および121℃,60分間の高圧蒸気滅菌を実施している.....
ラエンネックの場合
原料提供者1人1人について既往歴,問診及び血清学的検査等によってウイルス・細菌の感染症等をスクリーニングし,その後HBV-DNA,HCV-RNA及びHIV-1-RNAについて核酸増幅検査(NAT)を行い適合した,国内の満期正常分娩ヒト胎盤を原料として製造されている。また,本剤の製造工程で行う121℃,20分間の高圧蒸気滅菌処理は,HIVをはじめとする各種ウイルスに対し,不活化効果を有することが確認されている。更に,製品試験においてHBV-DNA,HCV-RNA,HIV-1-RNA,HTLV-I-DNA及びパルボウイルスB19-DNAについて核酸増幅検査(NAT)を行い,適合したものである.....
<コメント>
HBV,HCV,HIV,HTLV-IとはそれぞれB型肝炎ウイルス,C型肝炎ウイルス,エイズウイルス,成人T細胞白血病ウイルスのことです。パルボウイルスは比較的不活化しにくいウイルスとして知られています。メルスモン,ラエンネックいずれにおいても十分な処理が行われており,ウイルスや細菌に感染する心配はないと言い切ってもいいのではないでしょうか。ところで,一頃話題になったプリオン病(狂牛病のような病気)についてはどうでしょう。それについては,次回のコラムで考えてみたいと思います。
|
|
第4回 プラセンタ注射でプリオン病に感染することはないのか(2004.9.28)
メルスモンの添付文書にプリオン病に関する記載はありません。ラエンネックの添付文書には「現在まで、国内外において本剤の投与により変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD)等の感染症が伝播したとの報告はない。」の一文があるのみです。
<コメント>
両者ともプリオン病対策については(少なくとも公には)何も語っていないわけです。そこで少し考察を加えてみましょう。WHOは異常プリオンの不活化方法をいくつか示しています。その中に「121℃1時間高圧蒸気滅菌(水酸化ナトリウム又は次亜塩素酸ナトリウムに抵抗性の小さい乾燥物)」というのがあるのですが,メルスモンの添付文書にある「101℃以上,1時間以上の塩酸加熱処理および121℃,60分間の高圧蒸気滅菌」という処理がこのWHOの条件を満たしているか否かについての詳細はわかりません。一方のラエンネックはWHOが示すどの不活化方法の条件も満たしてはいません。しかしながらラエンネックは分子分画法という方法で製造していますので,分子量が明らかになっているプリオン蛋白を除くことは技術的に可能かもしれません。この点についても詳細はわかりません。
ところで,原料となる胎盤に異常プリオンが混入してくる可能性はいかほどのものでしょうか?具体的数値を示せるだけの知識はありませんが,かなりの低率でしょう。しかも仮に少量の異常プリオンが体内に入ったとしても簡単に発病するものではないという研究結果が最近出てきているようです。プラセンタ注射でプリオン病に感染する危険性はまずないと個人的には考えています。このテーマは非常に重要ですので研究の進展を今後とも追いかけて行きたいと思っています。
|
|
第5回 プラセンタ注射でプリオン病に感染することはないのか2(2004.10.7)
メルスモン製薬(株)より「メルスモンの安全性について」という文書を送っていただきました。以下はその抜粋です。
.....・塩酸加水分解法により製造されているため,胎盤中の蛋白質はアミノ酸に分解されます。・製造工程の途中及び,製品検査で,蛋白質を含有していない事を確認しています。.....これまで,メルスモンの使用により,クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)及び vCJD に感染したとの報告はありません。vCJD 等の原因とされる異常プリオン蛋白は,アミノ酸が複雑に重合した構造をもつ蛋白質であるといわれています。メルスモンは,蛋白質をアミノ酸に分解していますので,異常プリオン蛋白は,含有していません。
<コメント>
原料の胎盤に万が一異常プリオンが含まれていたとしても,蛋白質をアミノ酸に分解してしまっているので,蛋白質である異常プリオンも分解されてしまっている,ということです。これは非常に明解な説明だと思います。メルスモンで異常プリオンが原因の病気にかかることはないと言ってよいことになります。
|
|
第6回 メルスモンは更年期障害にどの程度効くのか(2004.10.22)
メルスモンの効能・効果は更年期障害、乳汁分泌不全ですが、今回は更年期障害に対する臨床治験の結果につきご紹介します。1980年3月から12月にかけて大宮赤十字病院、関東中央病院、社会保険中央総合病院、三楽病院、東京厚生年金病院、都立大塚病院、山梨県立中央病院の産婦人科で行われたもので、「薬理と治療」の1981年3月号で報告されています。
メルスモンを1アンプルずつ週3回、2週間継続して合計6回注射したグループで精神症状(頭重、頭痛、入眠障害、浅眠、早期覚醒、易疲労、倦怠感、不安、緊張感、いらいら感、うつ気分)と身体症状(のぼせ・熱感、めまい・ふらつき、発汗、ドキドキ・息ぎれ、冷え性、食思不振、嘔気、腹部膨満感(緊満感)、下痢、便秘、首のこり、肩のこり、関節痛、腰痛、頻尿、眼精疲労)の全般に対して著効または有効と判定されたのは 77.4% 、一方生理食塩水を同条件で注射したグループで著効または有効と判定されたのは 25.0% でした。(軽症と重症を除いた)中等症で比較してみるとメルスモンを注射したグループで著効または有効と判定されたのは 89.4%、生理食塩水を注射したグループで著効または有効と判定されたのは 8.3% でした。
結論として述べられている部分を以下にそのまま転記してみます。
1)投与開始2週間後の症状改善は、精神症状、身体症状および総合効果からみてもメルスモン投与群の方が明らかに有効である。
2)重症度別の症状改善度については、中等症に有効であることが明らかになった。重症例については1例しかなく、比較検定ができなかった。
3)副作用はいずれの投与群でも軽微で特記すべきものはなかった。
以上のことから、メルスモンは更年期障害の治療剤として特に中等症に有効で、認むべき副作用のない点から考えても安全性が高く、極めて有用性の高い薬剤といえる。
<コメント>
かなり前に行われた治験ですが、更年期障害に対する治療効果は症状で評価するしかないので、方法、結論とも今でも通用するものといえます。現在ではホルモン療法が主流ですが、手軽さ、有効性、安全性、安価であることを考慮すると、メルスモンは見直されてよい注射液と考えます。
|
|
第7回 ラエンネックは慢性肝疾患に実際に効くのか(2004.12.17)
今回は,ラエンネックが慢性肝疾患に効果があるかどうかを確かめるために行われた研究をご紹介します。15名の研究担当者の所属は,東京医科大学第一内科,国家公務員共済組合連合会三宿病院内科,千葉大学第一内科,日本医科大学第一内科,浅草寺病院内科,群馬大学第一内科,市立堺病院内科,京都府立医科大学第三内科,慶応義塾大学内科,順天堂大学消化器内科,鹿児島大学第二内科,福岡県済生会福岡総合病院内科,東京慈恵会医科大学第三病院消化器内科,松山赤十字病院内科,佐々木研究所杏雲堂病院内科でした。「肝臓」の1974年3月号で報告されています。
慢性肝疾患の患者(ほとんどが肝硬変と慢性肝炎)が,ラエンネックと対照液とを,2週間で交代してくり返し,それぞれを2回,合計8週間投与されました。1日1回2ml(ラエンネック1アンプルが2ml)ずつの筋注投与です。全体が2群に分けられ,第1群はラエンネック2週間-対照液2週間-ラエンネック2週間-対照液2週間の順番,第2群は対照液2週間-ラエンネック2週間-対照液2週間-ラエンネック2週間の順番でした。124例が統計的手法で分析され,ラエンネック投与により GOT と GPT が有意に低下したと判定されました。「ラエンネックは GOT・GPT を指標として判定すると,慢性肝炎および肝硬変に有効な薬剤である,と結論される。」と述べられています。
<コメント>
GOT,GPTは肝臓の細胞が壊れると細胞外へ出てくる酵素で,ラエンネックによって血液中のGOT,GPTが低下したということは肝臓の細胞が破壊されるスピードが遅くなったことを意味します。同様の効果を持つ注射液でよく使われるのが強力ネオミノファーゲンC(通称,強ミノ)ですが,強ミノで下がりきらない例にラエンネックを使うと更に下がるということを時々経験します。
|
|
第8回 「美容注射で肝障害〜胎盤エキス」という新聞報道について (2005.1.17)
2005年1月7日読売新聞夕刊に上記標題の記事が掲載されました。これは2004年12月10、11日に開催された第35回日本肝臓学会東部会で発表された「ヒト胎盤エキス(プラセンタ)が原因と考えられた薬剤性肝障害の1例」と題する演題に関するものです。発表者は国立国際医療センター消化器科の先生方です。以下にその抄録の全文をご紹介します。ただし、3種の薬剤名は空欄とし最後にその薬剤名を記する形をとります。その理由は後で述べます。この症例で使用されていたのはラエンネックです。
近年、老化防止や自然治癒力に関する効能を謳ったヒト胎盤エキス(プラセンタ)の注射薬が巷間でもてはやされている。厚生労働省の認可を得ている医薬品であるにもかかわらず、成分は明らかにされておらず、また、安全性についても疑問があると言わざるをえない。今回、プラセンタによると思われる薬剤性肝障害の1例を経験したので報告する。
症例:41才女性 主訴:全身倦怠感、黄疸 2004年7月23日38℃台発熱、全身倦怠感、上気道炎症状出現。市販の感冒薬を内服していたが、食欲不振、全身倦怠感が持続し、同26日黄疸を指摘され近医受診。急性肝炎疑いにて同30日当科へ紹介入院。海外渡航歴なし、常用薬としてビタミンC・E、ホルモン剤(<薬剤A>)、にきびに対して<薬剤B>連日内服あり。また、本年3月より月2回<薬剤C>注射を受けていた。入院時検査:AST 945U/l、ALT 1510U/l、ALP 651U/l、
γGTP 155U/l、T.Bil 9.6mg/dl、D.Bil 5.1mg/dl、PT 58.5%、
IgG anti-HA 39.6INH%、IgM anti-HA(-)、HBsAg(-)、
IgM anti-HBc(-)、anti-HCV(-)、HCV RNA(-)、HEV RNA(-)、
IgG 1630mg/dl、IgM 210mg/dl、抗核抗体陰性、
抗ミトコンドリア抗体陰性、IgM anti-CMV(-)、
EBV IgM anti-VCA(-)、anti-EBNA 160倍。腹部超音波検査:胆嚢壁肥厚のみ。入院後自覚症状は徐々に改善したが、ALT高値が持続し黄疸が遷延化したため、第8病日より強力ネオミノファーゲンC60ml静注連日を開始したところ、ALTは順調に低下し、T.Bilも第11病日の16.6mg/dlをピークに低下した。急性肝障害の原因として薬剤性が疑われたため、<薬剤B>、<薬剤A>、<薬剤C>に対するリンパ球刺激試験を施行したところ、S.I.は各々1.0、1.4、2.0 (2.0以上が陽性)で、<薬剤C>のみ陽性であった。
プラセンタはヒト胎盤をアセトンで脱脂後、塩酸で加水分解し精製した製剤で、諸種のサイトカイン、アミノ酸、ペプチド、核酸塩基、糖質等を含有するとされる。アレルギー反応を介して薬剤性肝障害の原因となった可能性があり、また、一般の注意を喚起する貴重な症例と考え報告する。
<薬剤A>はメサルモン-F、<薬剤B>はミノマイシン、<薬剤C>はプラセンタです。なお、リンパ球刺激試験について「(2.0以上が陽性)」の部分は筆者が補足したもので原文にはありません。
<コメント>
今回は、一般の方にはおそらく難しいと思われる学会発表の抄録をそのまま紹介させていただきました。「薬剤性以外の原因は考えにくく、リンパ球刺激試験でプラセンタのみが陽性基準内にぎりぎり入るので、プラセンタが原因だった可能性がある。」という論旨です。さて、どうでしょう?私個人の印象を言わせていただければ、これでプラセンタが原因とするのはいささか強引ではないかと思います。実際、発表者も断定はしていません。気がかりに思う方がいらっしゃいましたら、「症例:41才女性・・・・・<薬剤C>のみ陽性であった。」の部分を印刷し、お知り合いの先生に意見を伺ってみてはいかがでしょうか?プラセンタ注射は危険だという先入観を排除するため、具体的薬剤名は意見を伺った後であかしてみてください。
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|